自賠責保険の被害者請求とは、交通事故に遭った被害者が、自ら自賠責保険会社に対して保険金の請求や後遺障害申請を行う手続きであり、自賠責法第16条1項により認められています。
多くの場合は、加害者が加入する任意保険の保険会社が、自賠責保険分も一緒に支払う「一括払い」や、その保険会社に手続きを一任する「事前認定」という方法が採られます。これらには、煩雑な手続きをしなくて済むというメリットがありますが、被害者請求をする方がメリットが大きい場合があります。
■被害者請求をすることでメリットがあるケース
●示談成立前に最低限の補償を受けたい場合
加害者側の任意保険会社との交渉や、上記の「一括払い」の場合は、通常、示談の成立後に損害賠償金の支払いがなされます。そうすると、被害者は、示談が成立するまでは慰謝料はもちろん、通院にかかる費用等を受け取ることができなくなってしまいます。
しかし、自賠責保険の保険会社に直接被害者請求をすることで、任意保険会社との示談の進捗に関わらず、最低限の補償を受けることが可能になります。
示談成立前に保険金を受け取ることで、経済的な余裕ができ、金銭的な事情による妥協などをすることなく示談交渉を進めることができます。
●後遺障害の等級認定を受けたい場合
後遺障害の申請手続きも、加害者側の保険会社に任せることができます。しかし、加害者側の保険会社は、事務的に手続きを代行するため、被害者の希望通りの認定がなされるよう積極的にサポートをしてくれるわけではありません。
そのため、最低限の提出資料だけでは、資料不十分と評価されて、適切な後遺障害等級の認定をしてもらえない可能性があります。
しかし、被害者請求の場合は、症状の証明に必要だと思われる書類を、被害者自身がいくらでも提出することができます。その結果、十分な資料に基づいた判断をしてもらうことができ、適切な後遺障害の等級の認定を獲得することにつながります。
また、「事前認定」での後遺障害の認定結果に納得がいかない場合、被害者請求で再申請することが可能です。後遺障害申請のやり直しをしたい場合の手段としても、被害者請求は有効といえます。
●被害者の過失割合が大きい場合
被害者の過失割合が大きいと、過失分を差し引いた(過失相殺)金額しか加害者へ請求することができないため、請求金額が大幅に減額してしまう可能性が高いです。
しかし、自賠責保険による補償では、過失割合が相当大きい場合でなければ、このような控除は行われません。
そのため、被害者の過失が大きい場合は、加害者が加入している自賠責保険に被害者請求する方が保険金を多くもらえることがあります。
■被害者請求の方法
被害者請求には、①仮渡金請求②本請求、の2種類があります。
●仮渡金請求
仮渡金とは、加害者からの損害賠償金の支払いが受けられない場合に、当面の生活費や治療費として請求できる一時金のことです。請求は、被害者のみが一度だけ行うことができます。
また、死亡事故の場合は290万円、傷害事故の場合はその傷害の程度により、5万円・20万円・40万円と定められています。
●本請求
本請求の手順は以下の通りです。
①交通事故によるけがの完治、または症状固定
②必要書類の準備
③自賠責保険会社への書類提出および請求
基本的に、被害者請求は交通事故による損害が確定してから行うため、病院の担当医から完治または症状固定の診断を受けてから手続きを進めていくことになります。
また、②の必要書類には、交通事故証明書・事故発生状況報告書・保険金請求書・後遺障害診断書・交通費明細書・休業損害証明書、などがあります。
■被害者請求の相談は行政書士へ
もっとも、被害者請求をする際には、書類の準備や手続きにかなりの手間がかかります。警察署や病院などに問い合わせて数多くの書類を準備しなければならず、心身に傷を負っている中でそれらを行うには、かなりの労力が必要になります。また、漏れがあると、十分な保険金が支払われない可能性もあります。
そこで、被害者請求をする場合には、行政書士に依頼することをお勧めします。行政書士は書類作成や手続きのプロであり、被害者請求における手続きがスムーズに進むようにサポートしてくれます。また、行政書士は交通事故に詳しいため、後遺障害の等級の認定を受けたい場合に相談することで、等級認定が有利になるとともに、保険料の増額が期待できるといえます。
行政書士松浦法務事務所では尼崎市、神戸市、大阪市、京都市を中心に、交通事故や死亡事故、人身事故、障害年金などさまざまなご相談を承っております。後遺障害、慰謝料請求など、交通事故等のトラブルでお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。
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自賠責保険の被害者請求とは?
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